『ワークスアプリケーションズ創業者牧野正幸氏スペシャル対談』 Part3.DX時代における仕事の仕方、個人と会社の関係について

2022年3月17日

株式会社パトスロゴス 代表取締役CEO

牧野 正幸(まきの まさゆき)

日本IBM契約コンサルタントを経て、1996年ワークスアプリケーションズを創業。COMPANYシリーズのグランドデザインを固め、日本初の大企業向けERPを開発販売。
数多くの上場、未上場の企業の経営アドバイスを行い、CEO退任以降は同様に経営アドバイザーとして活躍。2020年10月、日本におけるデジタルシフトの遅れを取り返すことを目的に株式会社パトスロゴスを創業。DXに寄与する自社製品の研究開発とサービスを提供すると共に、ベンチャー企業への経営支援、優秀なビジネスパーソンの輩出のサポートをしている。

株式会社InfoDeliver監査役

桐原 保法(きりはら やすのり)

ソニーで長年人事分野に従事、人事制度の変革や人事の国際化を進め、80年代には日本語ワープロの導入、オフィスコンピュータの導入等、OA化のリーダーを務める。2003年COMPANY導入をきっかけに、牧野氏と知り合う。人事や総務・環境・生産戦略等の役員を歴任し、退任後、ソニー健康保険組合理事長、ソニー教育財団副理事長などを経て、(株)InfoDeliver監査役に就任、現在は、ビジネスマンのコーチとして20名ほどのコーチも務めている。

牧野氏:次は何の話します?

MC:このコロナ禍、上場企業で新たに設立された部署の名前の多くにに「DX」がついているという調査結果がありました。「DX推進部」、「DXソリューション部」など。そこに社員を集めてきて、新しい部署が作られているという現状があると。そこでは「何をしたらいいのか」、「どこへ向かっていけばいいのか」など分からず、今から調査をするというような状況だと。そこで先ほど牧野さんのお話でもありましたが、我々が生活していく上でずいぶんDXが身近なものとなり、もはや現金もあまり触らないような時代になってきた、ともいえます。

その上で、これからの仕事の仕方、変わった働き方はコロナが終わったらまた元に戻ってしまうのか、ならばそれをどうしていくべきなのか、さまざまな変革を進めてこられたお二人のご意見をお聞きできたらと思います。個人と会社の関係、というところにも及んでくる話題になると思います。まずは、これからの仕事の仕方というところで、牧野さんのご意見をお聞きしてもよろしいでしょうか。

牧野氏:はい。まあ、仕事の仕方そのものと、その個人と会社の関係というのは、同じ話になると思います。今、一番わかりやすいことでいうと、コロナ禍、テレワークがめちゃめちゃ進みました。やった結果、いろいろな統計データがありますけど、効率が悪化しているという人が、やっぱり多い。効率が上がったという人が1割。変わっていないという人がだいたい4割から5割ぐらい。残りの4割がやや悪化したとか、効率が悪くなった、みたいな人がいる。基本的には効率が上がっている人と変わらない人だけで、55%くらいはいるんですけれど、下がったという人もいる。
とはいっても、現実的には上がったという人もいるっていうのが事実ですし、間違いなく本来は上がるはずです。移動時間も無くなっていますから。唯一ダメなのは、コミュニケーションが取れないので、新しいものを生み出しづらいというのが現実にあるんですけど、正直言って業務の作業そのものを考えると、絶対的に、通勤時間がないだけでも効率が上がりますし、そういう意味じゃ、変わっていくという意味で言うとそれが変わった。無理やり変えられたというべきでしょうか。

ところが今またこれが戻しつつある。ただ全部が全部戻るわけではなくて、私が知る限り、大企業は比較的戻していますけど、まだ全部が戻るかというと、オフィスの面積を大きく削減した会社も結構ある。
そういう意味じゃ今後は、何割かは大企業も多分テレワークは残すと思います。一方で、ベンチャーをみると、基本全面テレワークに移行した会社はすごく多かったんです。
ただ、今度は逆にベンチャーは、どんどん革新していかなきゃならないので、コミュニケーションが取れないと、新しいものを生み出す速度が遅くなるんですよね。これが実はベンチャーの問題点で、ある程度出社をみんなしたがるんですよ。ベンチャーの場合。

何かみんなと話しながら仕事ワヤワヤやりたいっていうのもある。だからオフィスが逆に言うと必要。ただオフィスといっても固定席のあるようなオフィスじゃなくて、いわゆるホテルのラウンジみたいなスペースだったり、ファミリーレストランみたいなスペースだったりで、いろいろみんな工夫していますけれど、出社した人がみんなでこう、ワイワイ楽しくやれるようなオフィスを作ろう、という動きに変わっていますよね。

桐原:そうでしょうね。まさに人事的な観点でいうと、今までだと例えば9時から5時まで会社にいればOKという状態から、ずいぶん変わってきたなと。

牧野氏:そうですね。

桐原:いればいいというんじゃなくて、やはり仕事をする、アウトプットを出すってことがすごく大事なわけじゃないですか。その辺が何か、来たらOKという、何もしなくても…ということじゃ通用しないという視点がだいぶ生まれてきている可能性はあるなと。

牧野氏:そうですね。

桐原:もうひとつ言うと、毎日来なきゃいけないんじゃなくて、場合によっては来なくてもいい可能性が生まれてきたっていうのは、すごく大きいなと。それこそ社員の自由な働き方っていう視点と、その全体の効率という視点と。今までは「全体効率が大事、だからみんな来なさい」だったんだけど、そこが人によっては必ず来なくてもいい場合も生まれた。この2年間で経験したことはすごく大きい…。

牧野氏:大きいですね。

桐原:大きいと思うんですよ。だからまあ、戻る部分はもちろんあると思うんだけれど、でも全部戻す必要もないなと。こういうことを振り返ってみると昔、あのなんでしたっけ、フレックス勤務とか言ったかな。特にソニーの場合なんかも、いわゆる専門職の人たちは、まあ自由勤務だと。

牧野氏:裁量労働制ですよね。

桐原:そうそう。そういうことがOKだと。ある人たちだけがOKという、一種の規制を作ってOKとしてたんだけど、それが別にそういうのでなくても認める可能性が生まれてきたねって。

牧野氏:そうですね。

桐原:だから状況によって、ライフスパンを考えたとき、常に会社に来なきゃいけないという状態は、不自由な人たちも出てくるじゃないですか。介護の問題とか子育ての問題とか。あるいは留学みたいなこともやりたいというのも出てきたりするし。そういったことに対して、フレキシブルに対応するような会社の運営の仕方というのが、可能なんだって、みんなが体感できたのは、すごく大きいなと思うんですね。

牧野氏:そうですね。
そこがまさにデジタルトランスフォーメーションされた…強制的にされたんですよね。
だから今、Webの会議システムなど、いろんな情報共有システムを使って業務をやっていくというように、強制的にこの2年間でそこの業務はトランスフォーメーションされたと思うんですよね。これ実はアメリカなんかでいうと、本来一番進んでいるはずのアマゾンとかでも、もうテレワークを止めるとか言ったら、今度は逆に社員が反乱を起こしちゃって、辞めたら困るとか言うので、いや、じゃあ(テレワークを)やっていいです。では、週に2日ぐらいの出社に変えましょう…みたいな。こんな議論が出ちゃうぐらい。この領域に関しては世界中大混乱だったと思います。だから出社するというのは、ベンチャーの場合よくあるパターンでいうと、したいからする、みんながいるから行きたいんだ、というのが正しい姿だと思うんですよ。行った方がいいなと。僕も、だから今の会社だと、シェアオフィスですごい狭いスペースなんですけど、ここ数カ月間だけ新しいビジネスの立ち上げがあるので、出社したいなと。僕もお客さんとこに行くことがあっても、それ以外は全部テレワークでやっていたんですけど。やっぱり出社して、いろいろなやつと顔を突き合わせてガガガッとやっちゃいたいというのがある。しばらく出社できるスペースが欲しいみたいなことも起こっています。

僕はこの件に関して何が衝撃を受けたかというと、ここのところ移動に割と電車を使っていたんですよ。で、緊急事態宣言がこの間解除されるタイミングで、同じ電車に乗ったらめちゃめちゃ混んでいたんですね。緊急事態宣言の間、地下鉄とかもめちゃくちゃ空いてたんですよ。座れちゃうよ、どこでも、というぐらい空いていたのが、今はもう前と同じ、8時台とかの電車ってもう、すんごい混んでいるんですよ。電車が混んでいることには違和感なかったんですけれど、ある地下鉄の駅に降りて、ホームから改札に上がる階段を下から見たら、ものすごい人が上っていっている。この人たちのうち、いったい何%がアポイントがあって行ってんだろうと。
多分ほとんどの人が、出社するために行っている。何か用事があって行っているわけじゃないと思ったら、この移動の時間と労力のムダさを考えると、正直ぞっとしたんですよね。だからやっぱり、私は正直言って、テレワークと出社したいときにみんなで集まる、というパターンが結構ベストなんじゃないかなというふうには思いましたね。その時に。

桐原:そうなんですね。出社ということを別にして、例えば最近はいろんなセミナーをね、ネットで勉強することができる。

牧野氏:これもそうですけどね。

桐原:そこがものすごく便利になりましたよね。

牧野氏:便利になりましたね。

桐原:以前だったら絶対どこかへ行かなきゃとてもできなかったのに。今はもう、ちょっとザッピングしているだけでも、あ、この人が喋っている、この人が喋ってるっていうのがね、本当にアクセスしやすくなって。

牧野氏:なりましたね。

桐原:これいいよなと思っていた。ただ僕らはどうしても日本だけに偏っちゃうけど、多分世界に目を向けたらいくらでも情報は取り込めるような、そういう状況になってきていることは確かですよね。

牧野氏:いや、間違いないと思いますね。
あとはまあ、もうひとつは個人と会社の関係という意味でいうと、少し変わってきたなと思うのは、副業が認められているケースが増えてきたんですよ。

桐原:そうですね。

牧野氏:これは…何と言うんでしょうかね。僕はもし自分が、あの前職にまだ在任していたら、絶対認めなかったと思うんですよね。なぜかというと、まだベンチャーじゃないですか。言ってもね。ベンチャー企業って、自主裁量でみんな仕事をしているんで、そんな余裕あるわけないでしょというのがあって、要はそれだけの報酬を払っているんだから、それなりにやってくださいよと。逆に副業するんだったら申し訳ないけれど、全体で2割副業するんだったら、報酬2割下げさせてねって、多分言ったと思うんです。

ただ逆に今、パトスロゴスになってからは、結構みんな副業の人に手伝ってもらっているんですよね。大企業に勤めている人に副業で手伝ってもらって…みんな副業OKな会社ですから。そういったところでOKな人に副業をお願いして、手伝ってもらってというので結構、その2割の力でも十分ありがたいというケースも立ち上がりの会社の場合には多いので。こういうのも増えてくるんだろうなとちょっと思うんですよね。

桐原:そうですね。私の若い友人たち何人かも、副業でそれこそ自分の出身地のサポートをしますとかね。そういう話も結構聞きますからね。まあ、ずっとってことはないかもしれないけど、まさに人生コース、成長のプロセスの中で違う異文化経験というのはすごく大事だよな、ということを感じるんですよね。

牧野氏:あとはだから、雇用のあり方も変わるのかもしれませんね。これってまあ、究極言ったらジョブ型に近いですね。

桐原:そうですね。

牧野氏:日本はジョブ型制度が引かれないというのはね、それもまあ、グローバルに比べて遅れている理由と言われています。
けれども、確かにアメリカとかで、例えば一つの会社で求人しているのを見ると、その会社から出ている求人だけで、500種類ぐらいあるんですよ。
なんでこんなにあるんだろうと思って、その会社の求人サイトを見ると、まず場所で分かれてる。アメリカって基本理念、場所を相当みんな意識する、どこでも転勤可能じゃない。まず場所だけで20カ所ぐらいあって。で、なおかつ職種がめちゃくちゃ細かいので、その職種のランクもありますから、そうすると本当に500種類ぐらいすぐになっちゃうんですね。
でも日本の場合はといったら、基本的には中途か新卒か2職種、2職種、2個ぐらいしか求人がない。そういう意味じゃ本当に向こうはよく細かく分けているなとは思います。
ただ分けられるというのは逆に言うと、いいことでもある代わりに固定化する理由にもなるんですよね、職種自体が固定化すると。よくも悪くもだと思うんですよ。僕は日本の企業の方がはるかにそういう意味では、フレキシブルではあると思うんですけどね。人事制度そのものは。

桐原:フレックスな部分でもありつつ…。大企業にいた身からすると、やっぱり社内で社内転職を重ねるじゃないですか。

牧野氏:そうなんですよね。

桐原:そういう形で、まあ柔軟性を保っているっていう面もあるんでしょうけどね。どうしても小さい会社の場合は、なかなか1カ所に入れたら、なかなかそこから動かすことができない、そういった難しさはあるでしょうね。
いずれにしても昔と比べれば、圧倒的に転職する人が増えましたね。

牧野氏:増えましたね。増えました。

桐原:転職が増えるということは、やっぱりマーケットバリューというのが当然生まれてきつつあると思うので、そういう観点で人を見ることができるようになってきたわけですね。それはまさにジョブ型になっていく一つの動きだと思う。ちょっと時間はかかるかもしれないけれど、以前とはもう全然違うなと思いますね。

牧野氏:違いますね。

桐原:歴史はやっぱりなかなか戻らないものだなと、改めて思いますね。

牧野氏:おっしゃる通りですね。今後、私が実はむしろ変わってほしいなと思っていることというのは、アメリカの優秀な学生、だいたいハーバードなど出てる奴はみんな、最初に金融系にいっちゃうんです。
まあ、金融系が異常に給料が高いからなんですけども。これはちょっと今の特殊状況だと思うんですね。そんなに金融系が給与を高く配り続けるというのも、ちょっと不思議な話ですから。ただ基本的には多くの流れからすると、向こうの学生で優秀な人というのは、最初に選ぶファーストキャリアはだいたいベンチャー系を選ぼうとする人が多いのは事実なんです。で、なぜかというと、30歳になるまでの間にできるだけ多くのキャリアを身につけようと思うと、幅広に仕事をする方がいいということもあって、で、あの…幅広い仕事ということになると、やはりベンチャーというのはゼロベースから全部やることになるので、あらゆることを、雑務も含めてやらなきゃならないので。これをやっているケースが多くて。で、彼らの中でのパターンは、そこからのキャリアは、そのままその会社で上に上がっていく。もうひとつは自分でベンチャーの会社を作る。もうひとつは大企業に引き抜かれる。この3つなんですよ。

で、アメリカの場合は大企業も基本的にはマネージャークラスというのは社内から引き上げるよりは、むしろ外から取ってくる方が多い。そうすると、状況によってはシリコンバレーで結構成功して、かなりマーケティングで大成功した奴が出てくると、これを大企業がマーケティングの本部長クラスで一気に、30歳でも引き抜いてきちゃうみたいな。
というのがあって、これでアメリカってどんどんどんどん大企業も地位を入れ替えている。だから私は、日本も本当はそうなったらいいなってすごく思うんです。

今、実は企業の転職というのは、基本的には上にはあまり行かないんです。代金は取れないのでそれほど。だから基本的には大企業を辞めて、ベンチャーに行く。まあ、ベンチャーからベンチャーに行く。というケースが圧倒的に多い。大企業が新卒をとってもそれほど僕は意味があると思っていなくて、新卒の頃こそ本当はもっと苦労させるべきですし、何もかもがそろっている状況で何かをやるんじゃなくて、何も育っていないところで、自分でやれみたいなのが良くて。
で、わざわざ大企業の場合、それもあって子会社にマネージャーになるまで飛ばしたりするじゃないですか。経験を積ませる為に。そういう意味でいうと30歳ぐらいまでは、ベンチャーで働かせておいて、後で大企業が給与を高くして引き抜いたらすごくいい流れになるんじゃないかなと僕は思うので、ぜひぜひそうなってほしいなって、最近いつも思っている。いろんなところで言っています。

桐原:本当ですよね。やっぱり、まさに新卒一括採用からどうやって変わっていくかってことでしょうね。

牧野氏:ですね。やっぱりソニーさんクラスの会社だったら、本当に必要な人材って外からも集められると思うんですよね。中途でも。

桐原:私の頃でも半分半分ですよね。よそから入ってくる人が、半分はいましたね。
会社が育っていくためには、やっぱり違うことを知っている人じゃないとできないんですよね。ずーっとやっていると、これしか知らないんだけど。違う経験を取り込むというのはとても大事なことですよね。

牧野氏:そうですよね。なのでぜひぜひ、日本の企業も新卒を根こそぎ取るのをやめて、できるだけベンチャーに差し上げてくださいって感じもしますね。ベンチャー企業こそが一番優秀な若手が必要なので、(まずは)そっちへ持っていって、成功した人を後で高く引き抜いてくださいという。それはベンチャーがお金を払えないんだったらしょうがない話なので、それなりのポジションに迎えられるんだったら、もちろん行きたい人もいるでしょうから。

桐原:やっぱり多分ベンチャーの方が、自分で提案して自分で責任取って進めていくというサイクルを回しやすいんでしょうね。

牧野氏:回しやすいですね、これは。

桐原:大きい会社だと、言われたことをやるだけだけど、自分で考えて提案し、勇気も持ってチャレンジをして、そして辛さも喜びも味わえるような…そういうサイクルを20代30代の前半ぐらいまでに、何度か経験できることは大事なことですよね。

牧野氏:そうだと思います。これは別にそれを大企業が固定化しているというよりは、ベンチャーは組織がないので、逆にやらざるを得ないというのが正しいんですよね。
そんなにきれいな話では決してなくて、あるパターンが、割と大きな会社から転身してきた人がある部門に入ったら、「え、品質管理はどこが担当しているの?」みたいな。「そんなのどこにもありません」で、「どうやって品質保証するの?」みたいな。「それはみんながやると」と、「ええっ!」て。こういうことが起こるんですね。大きい会社というのは、長い間、歴史の中で、クオリティだとかいろいろなことに担保するため、いろいろな専門部門があって、専門部門が全部担保してくれているんですけれど、ベンチャーにいったら、ほぼそれは何もないので、それを自分で全部やりきらないといけない…それが割と大企業から転身してくる人が最初に躓くパターンなんですけれど。まあ、そういうものが全然ないからこそ、逆にいうと優秀な人じゃないとできないというのが本質なんですよね。

桐原:かもしれませんね。昔はそれこそMBAに行った人間を嫌う時代がちょっとあったんです。最初は評価して、次に嫌ったんだけど。今みたいなその、ベンチャーの経験というのはMBAになかったものを取り込める。

牧野氏:そうだと思います。

桐原:すごく大事な経験ですよね。

牧野氏:そうだと思いますね。

桐原:そういう意味では新しいビジネスを立ち上げるというのは、やっぱりいい経験なんだなと。

牧野氏:そうなんだと思います。はい。

MC:本日はDX時代に求められるスキル、とDX人材育成についてという大きなテーマのもと、そもそもDXとは何なのか、またDX人材に対する考え方、これからの仕事の仕方、また個人と会社の関係についてもお話を深めていただきました。
まとめとなりますが、今、まさに悶々と悩んでいる一企業の人であったり、経営者がたくさんいると思います。最後にお一人ずつ皆さんに向けてお言葉をいただいてもよろしいでしょうか。
では桐原さんからお願いしてもよろしいですか。

桐原:そうですね、いろいろと悩みを持っている方はとても多いと思うんですけれど、でも大事なことは、そうやって悩んでいても何も生まれないんですよね。だから変だな、どうしようかな、と思ったとき、今さら本を読むってわけにもいかないだろうけれど、少なくとも周りを見渡して、話を聞き、聞いてまわるというのは、まずそこから入ることって大事なんじゃないかな。世の中には自分が悩んでいることを、必ず先に取り組んでいる人はいるんですよね。自分が先端を行ってるってことはまずないので。

いろんな意味で自ら取り組んでいる人たちがどんなことをやっているか、あるいは世の中にどんな動きがあるか、世の中をみるってことがすごく大事なんじゃないかな、というふうに思いますね。
で、振り返ってみると、昔から結局日本人は、それこそ海外に学んだりして、要は違う文化を取り入れながら成長してきてる国じゃないですか。で、いろんな意味で、先人に学ぶって先人じゃないですか。昔の人じゃない、今、先を走っている「先人」に学ぶっていう。そういう姿勢をぜひみんなで持っていただきたいな、というふうに思います。

MC:桐原さんありがとうございます。牧野さんお願いいたします。

牧野氏:さっき申し上げたことの繰り返しになりますけど、あの…DX部門等でDXやれって経営者に言われて、その経営者はDXの中身はデラックスだと思っている人も結構いるという…なんてよくある話ですけど。DXを何かやる、やらなきゃならないんだということであれば、最初に経営者の方に提案するべきなのは、バックオフィス系。特に私は一番手を入れたらいいなと思うのはその経費の部分であるとか、あとは人事制度そのものに対するメスですね。人事制度そのものじゃなくてもいいんですが、人事手当系の複雑なものを全部なくすというのは、一ついい提案になると思います。

これがトランスフォーメーションですよって説明したらいいと思うんです。要は何もデジタルを入れるだけで何も変えないんだったら、それは単なるIT化というやつですね。単なるIT化というのは、ここ何十年やってきて成果が出ていないことぐらい分かるはずなんですよ。なので、デジタルトランスフォーメーションのこのXの方ですね。トランスフォーメーションということをやるのであれば、ここまでやる必要があると思うし、これがトランスフォーメーションですというのをまず提案されたらいいんじゃないかと思います。で、もう一つもっと軽いトランスフォーメーションをやるんだったら、先ほど申し上げたように、コロナのおかげで自動的にトランスフォーメーションされたことがいくつかあります。それは何かというと、出勤しないというやつです。
で、テレワークにおいてWebの会議のツール。あといろんな情報交換のツールなんかが、恐らく使わざるを得ないので使っていたと思います。
で、これをもう一個推し進めるというのが一つの方法だと思います。あの、要はもっともっとコミュニケーションが取れるようなツールを入れたり、もしくは紙を一回なくす方向に持っていったらいいと思うんです。

実は今回のテレワークで一番みんな困ったのは紙だと思うんですよね。紙が一切なくなったので、なくなったというか、紙を持っていきようがないので、だからもうこれを機会に社内にも紙を全部なくしたらいいと思います。
僕は実は紙をなくすのは賛成派じゃないんです。正直言って。私はiPadを使っていますけど、これがまだいいのは、書けるからいいんですよね。あの、なおかつただこれも良くないのは、画面はこれだけしかないじゃないですか。紙は広げられる、いくらでも。こうやって、これでこうやって見ながらいろいろやれるので、やはり今の状況だと紙をなくすてっことに僕は決して賛成じゃないんですけれど、ただあの、今みたいにテレワークの時代で考えると、テレワーク下の状況下で、100%同じパフォーマンスを出そうと思ったら紙は無くさざるを得ない、しょうがないと思うんですよ。
自分が仕事場で紙を印刷してみるのは、クリエーティブな意味ではいいと思いますけど、あと書くのも紙のが速いですし、それは悪くないですが、とはいってもお互い情報を交換したり、何か渡さなきゃならないものはもう、紙はもう無理なので、紙を無くして社内を全部動かす、ということをやればかなりトランスフォーメーションの一角はできるんじゃないかと思う。そこが一番簡単なトランスフォーメーションなんじゃないでしょうかね。
いろいろなツールが出ていますから、これを組み合わせてやりましょう。決してどこかに作ってもらわないように。これも作っていったらもう、アホみたいなお金がかかっちゃうので意味がないですから。世の中に出ているツールで達成するのが、今の時代のトランスフォーメーションなんです。デジタルトランスフォーメーション。
デジタルトランスフォーメーションは絶対にコンサルティングファームにお金を払っちゃいけないんです。はっきり言って。だって自社のトランスフォーメーションをなんで外の会社の人が(会社のことを)わからないのに、できるわけがないと私ははっきり言えると思います。
ITの企業のデジタルトランスフォーメーションのビジネスネタには決して騙されない、と言うことは大事だと思います。はい。

MC:ありがとうございます。貴重なヒント、そしてメッセージをいただきました。今日は株式会社パトスロゴス代表取締役CEOの牧野正幸氏、そしてインフォデリバー監査役の桐原保法氏にDXについて深い、広い議論をしていただきました。本日はどうもありがとうございました。

記事監修者
数年前、アジアのシリコンバレーと呼ばれる深センでは、日本企業が深セン企業を視察するブームが起こっていました。その時、私は同時通訳として、日本企業視察団の人たちと一緒に様々なスタートアップや起業事例に触れる機会に恵まれました。大手日系企業で働く中で、数々の企業の創新創業のパワーに感動して、深センに進出。現在は、IngDanアカデミー編集長として、深センを拠点に、中国パートナー企業の開拓・関係強化、調査やリサーチ、最新DX情報の発信を行っています。

聂 宏静(Nie Hongjing)
IngDanアカデミー編集長

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