ビッグデータの台頭とAIのデータ解析|中国の先進使用例を学ぶ

2021年10月11日

近年、インターネット・SNSがあらゆる国・階層に浸透しています。その結果、GAFAを始めとした企業が取得できる情報量が急増しています。
集積された大量の情報はビッグデータと呼ばれ、AIを活用した情報分析によって可視化され利用されています。

ビッグデータ・AIは企業活動の方針から、病院における医師の判断補助など、様々な分野で利用が進む、有用なものです。
一方で幾つかの企業に大量の情報が集積することで、個人情報保護などの問題点も指摘されています。
ビッグデータとAI、親和性の高い2つの技術がどのように利用されているのか、中国の先進的な使用事例から確認しましょう。

1.インターネットの普及によるビッグデータの台頭

近年、SNSやクラウドサービスなどの普及により、今まではスタンドアロン状態であったパソコンやタブレットなどの機器も含めて多量のデバイスがインターネットに接続しています。
このような状況の中で、SNSやクラウドサービスを提供する企業には利用者のあらゆる情報が集まり、蓄積されています。こうして集まったデータは「ビッグデータ」と呼ばれます。

ビッグデータは単体で扱うことはできません。ビッグデータは企業によって種類・形式も異なりますし、日々世界中のデバイスから送信される情報を集積するため、人の手で処理することができないほど膨大に、リアルタイムで蓄積されていきます。利用するためには、膨大なデータを利用できる形に出力する必要があります。

2.ビッグデータとAIの親和性

膨大な量のビッグデータは過去、利用することができないデータとして扱われていました。
この状況が変わったのはディープラーニング(深層学習)を獲得したAIの登場によります。
ディープラーニングは人間が行う仕事をコンピューターに学習させる「機械学習」の手法の1つです。
膨大なデータの中から類似性・規則性を見出すことで法則性を見つけ出し、問いに対する最適解を抽出します。

AIがディープラーニングの技術を獲得することで、ビッグデータの価値に変革が生じます。
人の手に負えないほどの膨大なデータをAIは瞬時に処理し、規則性・法則性を見出します。
また、ビッグデータはリアルタイム性という特徴のため、次々に新しい情報を提供しますが、AIはそれらも処理し、新しいデータと過去のデータの間の規則性を見出します。
こうしてAIを用いることで、ビッグデータから何らかの知見を見出すことができるようになりました。ビッグデータとAIはとても親和性が高く、お互いに不可欠な技術といえるでしょう。

3.中国深センのビッグデータ活用事例

具体的にビッグデータとAIを活用して得られるものはなにか、IT分野で先駆する中国深センの事例を確認しましょう。
中国深センでは、ビッグデータとAIを用いて都市をスマートシティ化する「深センスマートシティ」プロジェクトを推進しています。

プロジェクトの中で一般人が利用できるビッグデータの活用例としては「顔認証システム」が挙げられます。
顔認証システムは街路に設置された大量の防犯カメラなどで得られたビッグデータをAIにより分析することで個人を認識しています。顔認証によって無人販売店舗では財布を出すことなく、顔認証によって決済することができます。
防犯面でも顔認証技術は効果を発揮しています。

深センに配備された大量の防犯カメラは警察の犯罪歴データベースとリンクしており、指名手配犯に似た人物がカメラに映った場合警察に連絡するシステムが稼働しています。

参考:世界が注目するスマートシティ、中国深センの今
https://www.miraic.jp/online/8tips/category/tip06/994.html

交通システムにもビッグデータとAI技術が応用されています。
交通情報用カメラが常に深セン市内の交通状況を把握し、データを蓄積。
AIによる効率的な信号機の自動制御が行われています。同時に交通事故など、平常時と異なる動きが感知されたときにも自動で通報されるシステムが採られています。

ビッグデータとAIを活用した事例がある一方で、カメラや顔認証などのサービスから得られる情報を悪用する事例も見られます。
個人情報の保護について、深セン市ではデータ条例を2022年に施行する方針です。個人情報の入手について、運営者が必ず同意を求めること、他の目的に当該データを用いないことなどが明記されています。

ビッグデータとAIは社会の利便性や防犯能力などを向上しますが、一方で悪用による被害の範囲は極めて大きくなります。ビッグデータとAI技術の利用価値を検討するとともに、副作用や対策についても検討が必要です。

4.まとめ

SNSサービスを主として、インターネットに接続する時間や密度が高まっています。
従って企業が取得する情報量は増加の一途を辿り、莫大なデータを保有するに至っています。
さらにAIの実用化によりビッグデータは利用可能な形に出力可能になり、生活から行政サービスに至るまで様々な場所で利用が検討されています。
日本においてもビッグデータ利用の潮流は変わらず、その検討が進められています。

IngdanAcademyでは、スマート交通や顔認証といったビッグデータの利用で先駆的な深センを事例にビッグデータを始めとしたIT技術活用の方法を紹介しています。
先進的な事例を研究することで、他社との差別化を図りましょう。

記事監修者
数年前、アジアのシリコンバレーと呼ばれる深センでは、日本企業が深セン企業を視察するブームが起こっていました。その時、私は同時通訳として、日本企業視察団の人たちと一緒に様々なスタートアップや起業事例に触れる機会に恵まれました。大手日系企業で働く中で、数々の企業の創新創業のパワーに感動して、深センに進出。現在は、IngDanアカデミー編集長として、深センを拠点に、中国パートナー企業の開拓・関係強化、調査やリサーチ、最新DX情報の発信を行っています。

聂 宏静(Nie Hongjing)
IngDanアカデミー編集長

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