物流網は地上から空へ!深センドローン配送サービスを紹介

2021年9月28日

地上の物流網は渋滞を始めとして不確定要素が多いため、「この時間に到着する」という保障がないのが実情です。
一方でドローンは渋滞の影響を受けることなく定時に到着させることが可能です。

その他多くのメリットを享受するため、空中を飛ぶドローンビジネスの市場規模は、日本国内だけでなく世界中で拡大を続けています。例えば、写真撮影・農薬散布・インフラ点検・物流運搬・各種測量といった分野です。

これからのドローンの社会的・技術的改善点は、海外の先進事例を見れば分かります。
先んじてドローンを利用している中国、深センの事例を参考にしてみましょう。

1.深セン、ドローンを用いた空中物流が実用化

中国は2013年に「航空宇宙産業開発計画 2013-2020」を発表し、ドローンを重点支援項目に認定するなど、ドローンの利用・開発に力を入れてきました。 

特に深センではDJI・MMC・AEEといった世界でもトップクラスのドローンメーカーが誕生しています。
2019年時点でドローンの関連会社は600社を超え、年間取引額は8,000億円に上ります。

深センでは、Meituan社が既に配送サービスを開始しており、受注件数は2021年6月時点で2,500件になります。

ドローン配送はドローン本体の他に都市低空配送ネットワークを敷設する必要がありますが、深センでは全市で5G通信環境が整っているため、超低遅延の恩恵を受けてネットワークの構築を行う下地ができているといえます。

もちろん、中国においてもドローンの安全性は重要視されています。
特に運搬に用いる産業用ドローンの重量は20kgを超えるので、万一人的被害が発生すれば命に関わります。
この問題に対してMeituan社のドローンは、回転翼・電力システム・モーターをそれぞれ6機搭載しており、いずれかが機能を停止しても他のシステムが安全な着陸を保障しています。

他にも運搬用ドローンは市街地を通行するため騒音の問題が発生しやすいですが、同社ドローンは飛行時のノイズを60デシベルに抑えています。

60デシベルは人の通常会話程度の騒音になるため、騒音公害は発生しにくいと考えられます。
既に実用化されている事例を研究することで、日本においても取り入れられるノウハウは多いです。
特に中国は集合住宅が多く、建物同士が密集しています。

この環境は日本の都市部でも同様であるため、中国で成功したドローンのビジネスモデルは日本に輸入しても活用可能なものといえるでしょう。

2.京東物流 積載量1トンのドローン計画

物流網の事例として中国の「京東」グループのドローン活用も独特です。
京東グループは、中国で第2位のオンラインショッピングサービスです。
売上の増加とともに配送網の自社システム化を目指して取り組みを行っています。

京東グループは、中国の各大都市にスマート配送センターを設置し、「配送に係る全工程を無人化」することを発表しています。
倉庫内の工程の無人化に加え、倉庫から倉庫への貨物輸送をドローンに任せる計画があります。
この大型ドローンの有効積載量は1トン、飛行距離は1,000キロを超える可能性も期待できるようです。

このドローンは既に開発が進んでおり、中国の各所にドローン専用の発着場の建設が進んでいます。
日本では大型ドローンの開発は進んでいませんが、中国での成功が見られれば日本にも技術が輸入される可能性があります。
大型ドローンは災害時にも寸断された集落に向けた支援物資の運搬など使途の範囲は広がります。
日本国内だけでなく、中国を含め海外のドローン開発の動きは注視する必要があるでしょう。

参考:ダイヤモンド・オンライン「京東物流の1トンドローン」
https://diamond.jp/articles/-/265118

3.日本でも拡大するドローン市場

日本においてもドローン市場は、拡大を続けています。
2020年~2021年の国内市場規模は、31%増の1,841億円となっています。
さらに今後も市場は拡大を続け、2025年には6,468億円になると予想されます。

参考:ドローンビジネス調査報告書2021
https://www.jacom.or.jp/ryutsu/news/2021/03/210319-50139.php

利用目的も多様化しており、農薬散布・インフラ点検・物流運搬・測量など様々です。
特に農業への利用が進む日本では、米国のドローンメーカーが参入したり、ソニーなど大手企業が参入を図るなど、その分野の新しいビジネスモデルとして注目されています。

一方で、2020年2021年とコロナ感染対策のため実証実験や現場の実装が遅れています。
2022年からコロナウイルスの感染縮小が期待され、有人地帯の目視外飛行・携帯電話ネットワークを用いた長距離フライト・長距離を移動するVTOL型ドローンなどの実証実験が予定されています。

ドローン事業の拡大に合わせて問題になっているのが、マニュアルの作成やノウハウの蓄積、人材の育成です。
問題の顕在化は日本よりも、事業が先行する中国の方が早く訪れることが予想されます。
中国での事例を教訓に日本のドローン事業は問題の先んじた対策をとることが必要です。 

4.まとめ

ドローンビジネスは運輸業界を中心に革命的な変化を起こす可能性を持ちます。
中国深センでは、日本より先行してドローンビジネスの実証実験・実用化が図られています。

深センで発生したドローンに関する問題は、将来の日本でも発生する可能性が高い問題です。
ドローンビジネスにおいても、中国・深センの先進的な事例を学ぶことが大事です。
IngDanAcademyでは、ドローンを含めDXや5Gなど、先端技術の先行事例を多数紹介しています。先進事例から、日本のビジネスに転用できる点を探して有効に活用しましょう。

記事監修者
数年前、アジアのシリコンバレーと呼ばれる深センでは、日本企業が深セン企業を視察するブームが起こっていました。その時、私は同時通訳として、日本企業視察団の人たちと一緒に様々なスタートアップや起業事例に触れる機会に恵まれました。大手日系企業で働く中で、数々の企業の創新創業のパワーに感動して、深センに進出。現在は、IngDanアカデミー編集長として、深センを拠点に、中国パートナー企業の開拓・関係強化、調査やリサーチ、最新DX情報の発信を行っています。

聂 宏静(Nie Hongjing)
IngDanアカデミー編集長

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