DX導入によるインパクト|中国でのDX導入事例5選

2021年9月6日

DX推進の潮流は、日本だけでなく海外でも顕著です。

中国では、経済特区を設けてIT企業を誘致するなど、DXを含めIT技術を用いた新しいビジネスモデルの構築が盛んです。
既存のビジネスモデルを根本から更新してしまう事例もあります。
中国におけるDXの潮流、及び導入事例をみてみましょう。

1.中国におけるDX導入の潮流

中国では2015年に「インターネットプラス政策」と呼ばれる、インターネット・クラウド技術・ビッグデータなどのIT技術と従来の産業とを連携し、新たな産業への発展を目指す長期計画が発表されています。

加えて「中国製造2025」、「次世代AI発展計画」といった、製造技術・先進技術の発展を後押しする政策・方針を次々と打ち出しています。
更に、2010年に「戦略的新興産業の創出政策」打ち出しており、企業年金からスタートアップへの投資を可能にする規制緩和を行っています。
こうした新規事業、及び従来の事業とIT技術を組み合わせた変革を後押しする政策は、
スタートアップ企業、ユニコーン企業の創出に影響しているといえるでしょう。
こうした起業家が動きやすく失敗に寛容な風潮も、現在のDX導入事例の増加の一因といえます。

2.中国におけるDX導入事例

ここからは、中国でDXが導入された事例と、DXによる変化をみていきましょう。

(1)蘇寧易購集団 – スマート5G無人倉庫
中国の大手物流起業の事例です。
南京市に創設した倉庫では、商品の集荷・棚入れ・管理・補充・商品の取り出し・梱包・ラベリング・仕分け、全ての作業を無人で行っています。

フォークリフト・運搬ロボット・自動梱包機など、全ての機器において5G技術を活用して連携し、無人化を達成しています。
商品の運搬のみならず、倉庫内の巡回警備、顔認識システムによる従業員管理など、倉庫内全体をIT技術でつないで高い効率での倉庫管理を実現しています。

参考:「スマート無人倉庫」が南京に登場 集荷から発送まで20分で作業
https://www.afpbb.com/articles/-/3299576

(2)小盒科技Knowbox – AIと教育の連携
Knowboxは、公立学校の教師・生徒に向けた試験問題のデータベースや宿題の管理システムを提供していました。
事業で蓄積したデータ件数は400億件にも及ぶと言われています。

膨大なデータとAIを連携させることで、地域ごとの学習レベル、また教師ごとの学習ペースを元に生徒一人ひとりに合わせた教育を目指しています。
実際に生徒は、AIが選択したレベルの授業を現実の教師とAIの教師から受けます。将来的には授業全体をAI教師が担当することになり、人件費の削減が見込まれます。

参考:「Knowbox 」AIと教育の連携
https://36kr.jp/23580/

(3)ファーウェイ – DXを用いた安全な鉱山運用
5Gやスマートフォンで日本でも知られるファーウェイですが、広くビジネス展開を行っています。
5Gと鉱山という結びつきが見えづらい分野にもDX化を利用しています。

山西省の鉱山では、現場に配置されたカメラを5G回線で繋ぎ、リアルタイムで鮮明な画像を用いた監視を行うことができます。
削岩作業など、落盤の危険性がある作業についても5Gの技術を活用し、遠隔操作で安全に作業ができるよう配慮しています。
鉱山内部の状況をモニタリングすることで、水脈など危険な層の出現が事前に把握することも可能です。

参考:「ファーウェイ」DXを用いた安全な鉱山運用
https://36kr.jp/110472/

(4)中国政府 – 接触確認サービス
コロナ禍において、自分の利用した施設や公共機関にコロナ患者がいたのではないか、そう不安に思うことがありますが、接触確認サービスはこの不安を払拭するシステムです。
個人が利用した施設や公共機関の使用履歴がデータ化され、中国政府に送信されるシステムです。
利用した施設に感染者がいなかったのか、事後に確認することができます。
利用した施設などでコロナ患者がいなかったことが明確になれば、翌日の通勤、買い物など次の行動に安心して移すことができます。

参考:日経クロステック「接触確認アプリは前途多難、「先進国」中国に学べることはないか」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/063000577/

(5)スマートシティ – 深センの事例
深セン市は1,300万人の人口に対して土地面積は比較的小さいです。
しかし、他の中国都市と比較して渋滞の発生率が抑えられています。

その理由は、5G通信により設置されたカメラ、クラウドシステム、ビッグデータをリンクし、AIを中心に交通管理システムを構築することで、信号の適切な管理、交通事故発生時の迅速な対応が可能となっているからです。
都市交通の効率化は、人流・物流の双方の円滑化に寄与します。

3.DX導入のインパクト

DXを導入する際のインパクトの大きさは2つあります。

1つ目は、DX化により構築したシステム自体が商品となることです。
事例で紹介したスマート5G無人倉庫も、DXを用いた安全な鉱山の運用も、一貫したシステムを構築し、メリットが認識された時点で同様のノウハウを他社に販売することができるようになります。

鉱山の安全運用を例にすると、初期コスト、ランニングコスト、及び安定した鉱山の運用を行った場合の利益をデータとして算出できれば、他の鉱山でも同様のシステム導入を検討するようになります。

2つ目は、DXの導入は企業や個人でなく、社会全体に影響を与える点です。
スマートシティの事例では、深セン市との共同ではありますが、信号の適正な運用が個人・企業など、広範囲に影響を与えています。
IT技術の活用を単体で行うと、受益者が限られるのに対し、DX化により企業・システムを根本から更新すると受益者は限りなく広がります。

4.まとめ

先進的にDX化を進める中国の例を5つ紹介しました。
DX化はシステムの根幹を更新するものなので、影響の及ぶ範囲が広くなります。結果として、得られる利益や提供できる成果物も大きくなります。

DX化は莫大なコストがかかる場合が多く、検討には先進事例の研究が必要です。
IngDan Academyでは、主に深センにおけるDXの事例を多数紹介しています。
今回紹介したスマートシティについても紹介していますので、事例研究に視聴してみて下さい。

著者プロフィール
数年前、アジアのシリコンバレーと呼ばれる深センでは、日本企業が深セン企業を視察するブームが起こっていました。その時、私は同時通訳として、日本企業視察団の人たちと一緒に様々なスタートアップや起業事例に触れる機会に恵まれました。大手日系企業で働く中で、数々の企業の創新創業のパワーに感動して、深センに進出。現在は、IngDanアカデミー編集長として、深センを拠点に、中国パートナー企業の開拓・関係強化、調査やリサーチ、最新DX情報の発信を行っています。

聂 宏静(Nie Hongjing)
IngDanアカデミー編集長

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