デジタル通貨、深圳にて市民対象の実証実験へ

2020年10月23日

中国はデジタル通貨の研究と応用を絶えず推進しているが、10月9日、深圳市政府は人民銀行と共同でデジタル人民元を発行し、一般市民を対象にデジタル通貨の大規模な実証実験を行った。

この度、深圳市民を対象とし、1000万元のデジタル通貨が「iShenzhen」というAPPにて「赤い封筒」の形で配布された。191万人超えの申込者のうち、5万人に抽選が当たり、一人に200元(約3200円)のデジタル通貨が配布された。デジタル通貨と共に、「赤い封筒」の使い方説明も送付された。10月12日18時から18日24時まで、深圳市羅湖区での指定スーパー、飲食店、またはガソリンスタントなど3389店舗でデジタル通貨は利用できる。

では、デジタル通貨の体験はどうなっているだろうか。深圳衛視深市ニュースの取材報道によると、当選者の謝氏は12日夜、羅湖区の火鍋料理店でデジタル通貨を使用し、「全体的な利用感は結構順調だった」とのことである。謝氏は当選後、使い方説明に従い、「数字人民元」アプリをダンロードし、決済コードをレジに展示すれば完了で、アリペイやウィーチャットペイと一緒、とても便利だったそうである。この火鍋料理店の店長さんの話しによると、デジタル通貨のご利用に対応するため、銀行の従業員がPOS機器をアップグレードしただけで、別途に機器を設置する必要はないとのことだった。また、記者の調査によると、デジタル通貨に対し、市民は問題なく受け入れていることが分った。

また、銀行によって、スマホに表示されるデジタル人民元の色も異なる。デジタル人民元は二層運営システムを採用し、商業銀行を通じてデジタル人民元を市民に両替を行うからである。例えば、中国建設銀行ご利用の場合、青色になるが、中国銀行と工商銀行は赤色、農業銀行は緑色で、基本的には銀行のロゴ色と一致している。

深圳市インターネット情報事務室の公式微博(ウィイボー)によると、今回の実験は深圳がコロナ防疫期間中に行われ、消費を刺激し、内需を促進するための革新的な実践であり、デジタル通貨の研究開発過程における常規的な実験でもある。

実際、深圳はデジタル通貨の研究開発応用を最も早く推進している都市の一つと認められている。2016年、深圳金融発展「第13次五カ年企画」には、デジタル通貨の研究を強化することが提案され、その後、一連の支援策も展開され、関係研究機関が率先に推進した。2019年、深圳は社会主義先行示範地域の建設の優位性を活かすことで、デジタル通貨研究への国家支援政策を初めて取得した都市となった。

中国では、既に深圳や江蘇省蘇州市にて限定した範囲内での実験実証は行われてきたが、一般市民まで拡大するのは今回が初めてとなる。今回の実験では、デジタル通貨の譲渡やデジタル通貨口座への入金などはまだ実現できないが、最終的には現金と同様なやりとりが可能になると中国人民銀行が目指している。

著者プロフィール
数年前、アジアのシリコンバレーと呼ばれる深センでは、日本企業が深セン企業を視察するブームが起こっていました。その時、私は同時通訳として、日本企業視察団の人たちと一緒に様々なスタートアップや起業事例に触れる機会に恵まれました。大手日系企業で働く中で、数々の企業の創新創業のパワーに感動して、深センに進出。現在は、IngDanアカデミー編集長として、深センを拠点に、中国パートナー企業の開拓・関係強化、調査やリサーチ、最新DX情報の発信を行っています。

聂 宏静(Nie Hongjing)
IngDanアカデミー編集長

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