シジュウカラ—農村向けの金融リスク管理システム ~農作物の作付け状況で農家への融資を実現~
2020年10月14日9月25日、アリババ系のアント・フィナンシャル社は上海にて、衛星リモートセンシング技術をベースに構築してきた農村向けの金融リスク管理システムをリリースした。当システムは「大山雀(和名:四十雀/シジュウカラ)」と呼ばれ、衛星リモートセンシング技術を活用することで、農作物の識別、耕地面積の計算及び作付け状況の予測をスマート化させ、最終的には農民に無担保の金融サービスを提供することが目的である。
最新のデータにると、中国では70%近い農民は金融サービスを受けたことはない一方、三農(農村・農業・農民)への金融資金不足分は3兆元にも達していることがわかった。これは金融機関にとって、非常に参入価値の高い分野だと言える。しかしながら、銀行は優良資産の持つ企業のみ融資対象とする傾向があるので、三農に関しては、現地金融データの不足及び農民個人信用記録が無い背景の中、金融サービスは提供しにくいのは一般的である。さらに、農作物の品種判別、作付面積、収穫量が不安定のため、参考になれるデジタル信用資産にもならない。その結果、各金融機関は農民向けの融資事業はなかなか展開できなかった。
それを解決するため、人を農村に派遣したり、ドローンを飛ばしたりする方法で耕地や農作物写真を撮り、資産として計算することを試してみたが、結局、人手が足りない、必要な写真が取れない、もしくはコストが高いため、問題解決には至らなかった。
そこで人間が関わらなくても、安定的に撮影できる「シジュウカラ」の出番になる。ローコストかつ効率的、安定的に撮影するだけではなく、普通の写真と比べると、「シジュウカラ」の衛星リモートセンシングで撮影された画像のピクセルは実際の所在位置とマッチすることにより、農作物品種の判別と耕作面積の計算が可能になり、尚且つ自然災害による被害と収穫量への予測根拠にもなる。これらのデータを活用するもとで、農村住民への無担保融資は実現しやすくなってきた。
「シジュウカラ」は2019年から試運行、2020年から本格リリースされた。今現在、中国農村地域の3分の1で展開され、5万超えの農民に使用されている。また、農作物識別の正確率は93%に達し、業界平均レベルを遥か上回った。貸し出し案件の中、70%以上は初めて金融サービスを利用するものであり、オーバー率は少額貸付サービスとあまり差異がないものである。
一方、農作物が品種複雑な場合、あるいは気候の違うところ、どのように農作物の品種識別能力を向上させるか、また、リスク管理のため、耕地の状況をリアルタイムにモニタリングする必要となり、如何にコンピューティング能力を上げるかなど、解決待ちの課題はまだいくつか存在し、さらなる研究開発が必要そうである。
聂 宏静(Nie Hongjing)
IngDanアカデミー編集長